【シアン】

『っ?!』

愛斗の身体がぐらっと揺れた時、愛斗の体は前に倒れ込んだ。

『愛斗?!』

何があったの?!

『よそ見するな!』

スロウスの剣が私の頬をかすめる。

『くっ!』

頬から血が流れ、私はスロウスから距離を取る。

「シアン!愛斗とソレイユの様子が変だよ!」

私の中で雪菜の声が響く。

『分からない……。何が起きたのか』

『あれ?言ってなかったっけ?』

私の耳元で声が聞こえた。

『お前は!』

私はその気配に気がつくことが出来なかった。

気がついた時には遅く、剣が私の体を貫く。

『がっ!』

「シアン!」

『もう一人居るってこと、言ってなかったけ?』

『あ……、アク!』

『やぁシアン、昨日ぶりだね』

アクは私の体から剣を抜く。

私はお腹を抑えて後方へと下がる。

『はぁ……、はぁ……』

「大丈夫。シアン?」

『私は……、平気』

それよりも雪菜の体を傷つけてしまった。

それに、あの剣はやっぱり普通の精霊剣とは何かが違う。

『なぜお前がここにいる!その剣は、一体なんだ!』

浅い傷ならば直ぐに傷口は塞がる。

だけど、アクに刺された傷口は塞がるどころか血が止まらない。

『あー、これも言ってなかったか。この剣は、ジェネシス』

『ジェネシス……?』

聞いたことのない剣だ。

『これは、母様が隠していた最後の精霊剣だよ』

『ヴィーナスが隠していた?!』

そんな精霊剣があるなんて一度も聞いたことがない。

なぜ、ヴィーナスはジェネシスを隠していたの?

『ま、ジェネシスがどういう剣なのかは、ゆっくり知っていけばいいさ!』

アクは、私との間を一気に縮める。

『早いっ!』

私はアジュールでジェネシスを迎え撃つ。

『昨日よりも早さが増している……』

まさか、昨日のアクは本気ではなかったというの?

『おーいアク、あんたが来るんだったら、俺来なくて良かっただろ?』

『何を言っているんだスロウス。いつも寝てばかりの君にとって、これはいい運動になるじゃないか?さっき自分でもそう言っていただろ?』

『まぁ、そうだが……』

スロウスは苦笑してアクから目を逸らす。