スロウスは大きくあくびをしたあと言う。

『正直、俺はお前たちと闘うの凄くめんどくさい』

「め、めんどくさいって……」

『じゃあ、とっととこの場から去れ』

ソレイユが低い声でそう言う。

『そういうわけにもいかないんだよ。アクの命令だし』

スロウスがカッと目を見開いた時、愛斗の近くにあった一本の木が後ろへと倒れた。

「なっ!」

「何が起こったの……?」

今何が起こったのか分からなかった。

何か風を感じて気がついたら木が倒れた。

スロウスは、何もないようにあくびをすると瞳を紫色に輝かせた。

『アクの命令は絶対なんだよ。だから、大人しく闘え』

私は嫌な力を感じていた。

体には鳥肌が立って、スロウスから目を逸らしたかったのに逸らすことができない。

まるで金縛りにあったようだった。

『ソレイユと愛斗は下がってて』

「で、でも!」

シアンは愛斗の言葉を聞かずに私の目の前に来る。

『大丈夫よ雪菜、私が付いてるから』

「シアン……」

ここで闘わなかったら愛斗や子供たちが傷つく。

それだけは絶対に避けたい。

『あいつを倒すよ!』

「うん!」

私は、指輪を左手の薬指にはめて、指輪をチョーカーにかざす。

『共鳴(レゾナンス)、シアンとリンク・スタート!』

シアンは目を閉じ私の中へと戻る。

青い光が私の体を包み私は姿を変える。

「雪菜……」

空に手を伸ばし、手の中に精霊剣を出すと鞘にそれをしまう。