【雪菜】

「敵が現れたってどういうこと?」

私たちはシアンを先頭に走っていた。

さっき敵の力を感じたと言ったシアンが、愛斗の家を飛び出して行ったから、私たちも慌てて追いかけた。

だけど敵の力といっても、私は何も感じなかった。

ソレイユも何も感じてなかったみたいだったけど。

やっぱりリンクが可能な妖精と、可能じゃない妖精とでは、力の差でもあるのかな?

『そのままの意味よ、この近くで敵が現れたってこと』

「もしかして、アク?!」

『これは、違う……』

『となると、まさか……』

角を曲がった時、私は目の前の光景に目を疑った。

「な、なにこれ?!」

「子供たちが!」

そこには沢山の子供たちが倒れていた。

数人どころじゃない。

数十人は居るだろう。

私は子供たちに駆け寄り抱き起こす。

「大丈夫?!しっかりして!」

体を揺らして何度も声をかけてみる、だけど子供たちが起きる様子はない。

『これは、また厄介な術がかけられてるわね』

『何か知っているのか?』

シアンは、深く溜め息をついた。

『これは、七つの大罪の仕業よ』

「七つの大罪ってたしか、アクの兄弟姉妹たちだったよね?」

『そうよ。そして、こんな力が使えるのは一人しかいない』

シアンは前方を睨みつけていた。

「シアン?」

すると前の方から足音が聞こえてきた。

「誰か来る……」

愛斗は私の隣に来る。

足音はこちらに向かって徐々に大きくなっていく。

『やっぱりこれはあなたの仕業ね。七つの大罪の一人、怠惰の妖精スロウス』

足音の人物は、私たちの姿を見つけると立ち止まる。

『そうだよ』

スロウスと呼ばれた妖精は、私より身長は高く目の下にくまが出来ていて、とても眠そうに目をさすっていた。