【雪菜】

愛羅君の部屋から出た私は、愛斗の部屋の中へと入る。

「さっきはごめんね、愛羅が……」

「ううん。久しぶりに愛羅君に会えて、話せて楽しかったよ」

「なら、良かった」

私は久しぶりに入る愛斗の部屋の中をぐるっと見渡す。

二年前に比べると、大分落ちついた部屋になったと思う。

部屋の中は、主に赤紫色の物で統一されていて、本棚には剣道の雑誌や、パソコン関係の雑誌ばかり置いてある。

「さすが愛斗だなぁ……」

それに机の上にはパソコンも置いてある。

「君が雪菜の妖精のシアンだね?」

愛斗は、私の隣にいるシアンに目を向ける。

『そうよ』

シアンは愛斗の目の前へと行く。

そしてじっと愛斗を見つめる。

「な、なに?」

『あたななら直ぐに力を持てるわよ』

「力って……?」

そっか、愛斗はまだリンクについて詳しく知らないんだ。

『あなたの鞄に付いているキーホルダーを見てみて』

私と愛斗は、それぞれ持っているチョーカーとキーホルダーを見る。

このチョーカーは、今日の朝私の手の中にあった物だ。

よく見ると愛斗のキーホルダーと同じく、私のチョーカーにも青い蝶の紋章が刻まれていた。

『それは、私たち妖精の力を引き出すもの』

「妖精の力を?」

私は、昨日のアクとの闘いを思い出す。

『私たち妖精と心の主がリンクして一つになる。そして、心の主が妖精の力を借りて闘うの』

『もちろん、俺たちと主の意識を交代させて闘うことだってある』

だからあの時、私とシアンの意識が入れ替わることが出来たんだ。

シアンは私へと向き直る。

『雪菜、指を出して』

「え?」

なんで指なんだろう?

疑問を抱きつつも私は人差し指を出す。