【愛羅】

『行かなくて良かったのか?』

リズムが隣に来て、俺はベッドの上に座った。

「いいよ、雪菜はまたねって言ってくれたから」

俺は雪菜に撫でられたところに触れる。

「昔もさ、さっきみたく頭を撫でられたことがあったんだ。それが温かくて、凄く心地よくて、それで雪菜を好きになったんだ」

『そうか、でもライバルは手強いぞ』

俺は机の上にある写真を見つめた。

写真には、俺と愛斗と雪菜の三人で写っている。

「多分勝てないと思うよ」

『珍しく諦めが早いな』

「だって雪菜は兄貴を好きになると思う」

俺が付け入る隙なんてない。

俺は、兄貴になら雪菜を取られてもいい。

反抗的な態度を取ってるけど、俺だってちゃんと兄貴を応援してる。

兄貴は俺と違って剣道ができるし勉強もできる。

パソコンだって得意だ。

それに比べ僕が出来るのは何もない。

音楽関係の仕事に就きたいのは本音だ。

でも僕に出来るのかが不安だ。