【雪菜】

「でね、この曲はね──」

「おい!愛羅!」

部屋の外で愛斗の声が聞こえた。

「あ、愛斗来たみたいだよ」

「ちっ……」

愛羅君は扉に近づき言う。

「なに?愛斗」

「この部屋開けないと、お前の大事なCOSMOSの雑誌燃やすぞ!」

「なに!」

愛斗に何を言われたのか、愛羅君は血相を変えると慌てて部屋の扉を開ける。

「さすが愛羅」

「卑怯だぞ!クソ兄貴!」

そして、何故か二人の睨み合いが始まる。

「えっと……」

この状況が理解できない……。

どうしたら良いんだろう?

シアンとソレイユも中々戻って来ないし。

「とりあえず、そろそろ雪菜を解放しろ!」

「くっ……」

愛羅君はチラッと私の方へと振り向く。

そして──

「雪菜!愛斗が雪菜とラブラブしたいって」

「なっ!」

「え?」

ら、ラブラブってなに?!

どういうこと?

「このくそ……」

「へへーんだ!」

そこでまた二人の睨み合いが始まる。

二人ってこんなに仲悪かったっけ?

『これ、どういう状況なの?』

「あっ、シアン」

シアンとソレイユが部屋に戻ってきた。

「おかえり」

『ただいま』

二人で何の話をしてたのかな?

『おい、兄弟喧嘩はやめろ!リズムもたまには止めたらどうだ!』

『止められたら、今頃止めてる』

リズムはそう言いヘッドフォンで耳を塞いだ。

『たく……。おい愛斗、雪菜の話聞くんだろ?』

「う、うん……」

愛斗は私の手首を掴む。

「雪菜、僕の部屋行こう?」

「え、でも」

私は、愛羅君に目を向ける。

それに気がついた愛羅君は、そっぽを向いた。

「……。何か大切な話があるんでしょ?行きなよ」

そんな愛羅君に、私は目線を合わせてしゃがみこむ。

「愛羅君、またね」

私は愛羅君の頭を優しく撫でる。

「ほんと、雪菜って優しいよね。だから──」

愛羅君は、小さな声で何かを呟いた。

「今なんて?」

「何でもないよ。早く行かないと、愛斗が恨めしそうな顔でこっち見てるから」

「愛羅!」

私は愛斗の方を振り返る。

私の視線に気がついた愛斗は、何故か顔を真っ赤にさせていた。

『早く行くぞ』

ソレイユは先に部屋から出ていく、その後をシアンも付いていった。