『まぁ髪はすっきりしたから、礼は言っておくよ。俺の分身たちも、あの火柱で消されたみたいだし』

アクは、肩先まで短くなった髪をさすった。

そしてシアンの足元には、銀髪の髪が落ちている。

『お礼なんかいらない。本当は首が欲しかったんだけどね』

さらりと怖いことを言うシアンに、私は少しゾッとした。

『いいかアク!』

シアンは、アクに指を指し言う。

『私は、絶対お前を倒す。お前を倒さない限り、何も元に戻らないんだから』

『それは俺も同じだよシアン。お前がいる限り、俺の目的は果たせない。だけど――』

アクは、私達を嘲笑うように言った。

『もし俺が倒されたら、お前はどうなるんだろうな』

『そんなの、どうでもいい!』

私は、アクの言葉が分からなかった。

アクが倒されたら、シアンがどうにかなるの?

『ふっ……、本当の闘いの時まで、せいぜい残りの時間を楽しむといい』

アクは、そう言うと黒い影の中へと消えていった。

アクの気配が完全に消えたことを確認して、私はその場に座り込んだ。

「はぁ……」

胸に手を当て息を整える。

『ごめんね雪菜、体借りちゃって』

「ううん。それよりありがとうシアン」

私は、目を閉じシアンとリンクを外す。

「終わったの?」

私は、シアンにそう聞いた。

シアンは首を左右にふり、覚悟のある瞳を私に向けた。

『むしろ、ここからよ』

「そっか……」

近くで愛斗の声が聞こえる。

だけど、体が重たくて歩けそうにない。

体から力が抜けて私は倒れ込む。

『久しぶりに力を使うのは、やっぱり駄目か……』

シアンも倒れ込み、その場から姿を消した。

『ごめんね雪菜……、また後で……』

私は、重たい瞼を閉じた。