『あれ?主である雪菜は、君のことを何も分かっていないのか?』

「ねぇシアン、どういうことなの?!」

『ごめん雪菜。今は話している余裕がないの』

「シアン……」

あの時に掴んだ錠前は、幻じゃなかった。

なら、アクの言う通り私の中には、世界を壊す錠前が入っている。

もし、その錠前がアクの手に渡ってしまったら、世界が壊れる前に雪菜の心が壊れてしまうかもしれない。

……どうする?

このままアクから逃げるのは不可能だ。

捕まったら早々に錠前を抜き取られる。

そうなったら私は……。

『シアン』

『っ!』

ソレイユが手を握ってくれたことに気がついた私は、恐る恐る顔を上げた。

『ソレイユ?』

『心配するなシアン。周りを見ろ』

『周り?』

後ろを振り返った時、そこには精霊剣を構えたみんなが居てくれた。

「みんな……」

「安心して雪菜。雪菜のことは、絶対守るから」

『アクのやつになんて、雪菜の心は渡したりしない』

「奏佑の言う通りだ。だから、雪菜。俺たちを信じてくれ」

「みんな……」

雪菜は、涙を浮かべている。

『シアン。お前は一人じゃない、俺たちがいる』

ソレイユは、自分の指先を私の指先に絡める。

『必ず、守ってみせる』

『ソレイユ……』

そうだ。

私は一人じゃない。

どんな困難にだって、みんながいれば乗り越えられる。

ソレイユが隣に居てくれれば、何も怖くない。