それなのに私は……。

「雪菜、一つお前に忠告しておく」

「な、なに?」

“忠告”という言葉を聞いて体が強張る。

「お前はなるべく、シアンとリンクをするようにしろ。リヤンとリンクすることは、あまり勧められない」

「分かってる。もちろん、私はこの先の闘いもシアンとリンクして行くつもりだよ」

「そうか。それを聞いて安心した」

奇跡は、空になったカップをそっと置くと立ち上がる。

「それじゃあ、俺は帰る」

「ま、待って!」

帰ろうとする奇跡を慌てて止めてしまった。

「まだ何かあるのか?」

「聞きたいことって言うか、まだ言ってなかったと思って」

「言ってなかった?」

奇跡はこちらに振り向く。

「助けてくれてありがとうって」

「っ!」

お礼を言われると思っていなかったのか、奇跡は驚いて目を見開いていた。

「……別に、お礼なんていらない」

奇跡はそう小さく呟くと、シンクを連れて家から出て行った。