【プライド】

『ちっ!』

俺は、何本もの矢をアクに放つ。

しかし、その内の一本もアクのもとには届いていなかった。

『それが君の本気かな?プライド』

『言っただろ、時間さえ稼げればそれでいいって』

『そんなの、無理に決まっているじゃないか』

アクは、俺との距離を一気に縮めると、自分の膝を勢いよくを俺の腹に打ち込む。

『かはっ!』

『君の場合は、距離さえ縮めれば、あとは簡単に勝てるんだよ』

俺は、腹を抱えてうずくまる。

『くっそ……』

俺は、ふらつきながらもゆっくりと立ち上がり、もう一度矢をアクに構える。

『まだやる気?君にはまだ使い道があったんだけど、俺の言うことを聞かないなら、いらないよ!っ』

アクがジェネシスを一振りした時、俺の右腕が宙を飛んだ。

『うわぁぁっ!』

背後に落ちた右腕を見つめた俺は、アクを睨みつけた。

『こんなことしたら、流石にラースやグリードが気づくぞ』

『もしかして、まだ気づいていないの?』

『え……』

すると、後ろの方で裸足で廊下を歩いて来る音が聞こえた。

『……なんだ?』

アクよりも嫌な気配を感じる。

『君たちが五月蝿くするから、起きちゃったじゃないか』

足音の他にも、何かを引きずる音が聞こえる。

『誰だ……。そこにいるのは……、誰だあっ!』

『やぁ、おはようヴァニティ』

『っ!』

アクと同じ白銀の髪、そして同じ真っ赤な瞳を持ち、ヴァニティと呼ばれた女の子の足元には、エンヴィーが倒れていた。

『え、エンヴィー!』

ヴァニティは、エンヴィーの髪を引っ張りながら歩いて来る。

『お前……よくもエンヴィーを!』

俺は、左拳に力を込めてヴァニティに殴りかかった。

『はは……』

ヴァニティは、無邪気な顔で微笑んだ。

『なっ!』

そしてエンヴィーから手を離すと、俺の拳を簡単に受け止めた。