【エンヴィー】

『はぁ……、はぁ……!』

私は、急いで暗い廊下を走っていた。

私は、見てはいけないものを見てしまった。

アクにルル様のことを伝えに来た時、部屋に灯がついているのが見えて、部屋の中を覗いたらガラスケースの中に女の子が見えた。

そして、誰もいないのはずなのに、誰かに話しかけているアクが怖くなって、持っていたランプを落としてしまった。

アクがこちらをギロリと睨むのが見えた私は、直ぐにその場から離れた。

『アクがここに近寄るなと言っていたのは、あれを私たちに見られたくなかったから?!』

私は、振り返らずただひたすらに走り続けた。

それなのに、いつもの廊下に戻れない。

まるで同じところをぐるぐる回っている感じだった。

『もしかして……』

私を逃がさないために……殺すために……!

私は、頭を抱えてその場に座り込む。

こんな所で立ち止まってなんていられない。

だけど、足がすくんで立ち上がれない。

『お姉様……グリード……』

体がカタカタと震える。

すると後ろの方で足音が聞こえてきた。

『き、来た……!』

足音が廊下に響き渡る。

逃げたいのに逃げられない……。

恐怖で悲鳴すらあげられない……。

『誰か……』

頬に涙が伝った時、私の肩に勢いよく手が置かれた。

『っ!』

私の心臓が大きく跳ねた時、聞き覚えのある声が耳に届いた。

『エンヴィー?こんな所で何をしているんだ?』

『へ……?』

ゆっくりと後ろを振り返ると、そこにはプライドが立っていた。