【雪菜】

私たちは、キセキの泉へと向かっていた。

「この先にグリードって言う妖精が居るんだよね?」

未来の言葉に私は頷いた。

そう、この先には最悪の敵が待っているんだ。

「……」

「どうした一葵?浮かない顔して」

「あ、いや……」

『何かあったのか?』

クロアが一葵の顔を覗き込んだ。

一葵は、走る足を止めて立ち止まった。

「一葵?」

私たちも足を止めて、一葵の方へと振り返る。

「実はさ、さっき買い物の帰りにラースに会ったんだ」

『はぁ?!あのラースか?!なんでそのこと黙ってたんだよ!』

一葵はクロアを睨むと、恨めしそうにクロアの体を掴んだ。

「ほんと、お前は大事な時にいつもいないよなあ!」

『わ、悪かったって!だから振り回すな!』

目を回しながら叫ぶクロアを、一葵は一度手放すと、私たちに向き直る。

『なにか、ラースが言ってたの?』

シアンは、一葵の目の前へと飛んで行くと、シアンの言葉に頷いた一葵が口を開く。

「あいつ、俺に忠告してきたんだ」

「ラースが忠告をしてきた?」

『一体何のために?』

『きっと、気をつけろって意味だと思うわよ』

それじゃあ、グリードに気をつけろってこと?

でも、何でラースが私たちにそんなことを……?

「とにかく、グリードとは気をつけて闘った方がいい」

『ふん、そんなの当たり前よ。じゃなきゃ、一撃であいつに殺されるわよ』

「そ、そんなに強いの……?」

クレールの言葉に未来は後ろに一歩後ずさる。

『帰りたかったら、今すぐ帰ったら?』

「おいクレールっ!」

「か、帰るわけないよ!私だって、闘うためにここに来たんだから!」

未来はクレールに向かってそう叫ぶ。

未来の瞳は真っ直ぐクレールに向けられていて、嘘を付いていないと判断したのか、未来の意思を聞いたクレールは軽く笑った。

『なら、生きなさいよ』

「クレール?」

クレールの以外な言葉に、妖精たち全員はクレールへ視線を向けた。

『とにかく、先を急ぐよ』

「うんっ!」

私たちは再び走り始める。

目の前に一点の光が見えた時、私たちは光の中に飛び込んだ。