【一葵】

「くそ、姉貴のやつ……」

俺は、姉貴に頼まれたものをスーパーに買いに行っていて、今はその帰りだ。

「アイスとか菓子とか、自分で買いに行けっての……」

ぶつぶつそんなことを言いながら歩く。

まあ、パシリにされるのは、俺が姉貴より弱いってのが原因なんだが……。

それに、クロアの奴もめんどくさいとか言って一人家に残りやがって……。

「ほんと、ムカつくな……」

姉貴は、俺が逆らえないことを良いことに俺をこき扱うし、クロアはクロアでめんどくさがりだし。

「たく……」

どいつもこいつも……。

姉貴の奴なんて、最近やっと彼氏からプロポーズされたってのに、浮かれて呑気に家で寝ながら菓子食ってるけど良いのかあ……?

「にゃー」

「ん?」

ふと気がつくと、俺の足に何か擦り寄って来ていた。

よく見れば、それはこの前見たマシュマロという猫だった。

「おっ!お前マシュマロじゃん」

俺は、マシュマロを抱き上げて喉元を撫でる。

すると、マシュマロは気持ちよさそうに喉を鳴らした。

「お、ここ気持ちいいのか?」

ならもっと撫でてやろうと思った時――

『今すぐそいつから離れろ!』

「へ?うわぁ!」

後から徐々に声が近づいてきて、何事かと思い振り返った時、近づいて来た奴に俺は思いっきり蹴られた。

「いってぇ!」

その拍子にマシュマロは宙を浮いたが、すかさず一つの影がマシュマロを抱っこした。

そして俺は、そのままコンクリートの壁に顔を打ち付けた。

なんか前にもこんな事があった気がする……。

「いってぇな!なにしやがるっ!」

そう叫びながら振り返り、俺はそこに居た人物を見て後ろへと後ずさった。