「きっと、雪菜はあそこにいる」

裏山の道を辿り僕は上を目指す。

視界が開けた場所に出た時、目の前にうずくまって座っている雪菜のが見えた。

「雪菜……」

『本当に、ここにいたのね』

なんて声をかけたらいいのだろう?

今の僕に何が言える?

今の僕が、雪菜を笑顔にさせることが出来るのかな……?

「……」

僕は、雪菜にゆっくりと近づいて行く。

「……愛斗?」

僕の足音に気がついた雪菜は、こちらへと振り返ろうとした。

だけど僕は、そんな雪菜を後から抱きしめた。

「あい、と……?」

「雪菜、大丈夫……?」

その言葉で雪菜の中で何かが解けたのか、雪菜の頬に涙がつたった。

「愛斗……、私……」

雪菜は、僕の制服を強く握りしめた。

「私……失恋しちゃった……」

「うん……」

「今日言おうと思ったの……、優空君が好きだって……、でも言えなかったよ……」

僕は、抱きしめる腕に力を込める。

「私じゃ……、駄目なんだよ……」

「雪菜……」

「ここに来れば、笑顔になれるって思った。でも……笑顔になれないよ……」

僕は、必死に言葉を探した。

どうすれば、雪菜の涙を止めることが出来るのか。

どうすれば、雪菜のことを笑顔にすることが出来るのか。

でも、今の僕の中で浮かんで来る言葉は、謝罪ばかりの言葉だった。

止められなくてごめん。

一人にしてごめん。

あの時、本当のことを言わなくてごめん。

そんな言葉ばかりが浮かんで、後悔という気持ちが僕の中で広がって行った。

「愛斗……、どうしたら笑顔になれるかな……?」

震える声を振り絞って言う雪菜の声を聞いて、僕は力強く叫んだ。

「無理して笑わなくてもいいんだ!」

僕は、雪菜の顔をそっと覗き込んだ。

「泣きたい時は、思いっきり泣いていいんだよ……」

「……愛斗……」

僕の腕の中で雪菜は、子供の時のように泣いた。

そんな雪菜の体を、僕は強く抱きしめた。

「悲しい時、苦しい時は、僕が必ず傍にいるから。絶対に雪菜を笑顔にさせるから!」

「っ!愛斗……」

今すぐ言いたい。

僕じゃ駄目なのかなって?

優空を諦めて僕を見てほしいとーー

今直ぐ言えるものならば、雪菜に僕の気持ちを伝えたい。

でも、今の雪菜にとって僕の気持ちは、ただ重荷になるだけだ。

だから雪菜、もう少しだけ待っててほしいんだ。

今度は、僕が雪菜の好きな人になれるように頑張るから。

だから僕だけを見ててほしい。

この先、ずっとーー