「もう!お母さんなんて大嫌い」

「ゆ、雪菜ちゃん……」

雪菜は、望美さんの描いた絵に落書きをしたらしくて、それで酷く怒られたそうだ。

僕は、そんな雪菜に道連れにされたと言うか、連行されたと言うか……。

そして、お母さんに言われていた宿題を終わらせる前に、雪菜に連れ出された僕たちは裏山に逃げ込んでいた。

「だめだよ雪菜ちゃん、ここ子供は立ち入り禁止だよ?」

「いいの!家には帰らないんだから!」

「またあ?」

もうこれで何回目だろうか……。

「今日は、ここにいるの」

雪菜はそう言うと、大きな木の下に座り込む。

僕も溜め息を吐きつつ隣に座る。

「ねぇ雪菜ちゃん、僕も一緒に行って謝るからさ帰ろうよ」

「いやだ!愛斗は、私といるの嫌なの?!」

「そ、そんなことないよ!」

むしろ一緒に居れて嬉しいよ……。

でも、やっぱり何も言わずここに来たのは、さすがに駄目だと思う。

「望美さん、心配してると思うよ。奈津さんだってきっと」

「帰りたくないの!」

雪菜はそう力強く言うと、膝に顔を埋めた。

「お母さん、私のこと嫌いなんだもん……」

「そ、そうなの?」

それは初耳だった。

あの望美さんが、雪菜を嫌っているようには見えないけど?

「だって、絵ばっかり描いてて私と遊んでくれないんだもん」

「え、えぇ……」

それって、お仕事だから仕方ない無いんじゃないかな?

「そんなことないって」

「そんなことあるもん!お母さん私のこと嫌いだから、遊んでくれないんだよ!」

雪菜は、そう言うと泣き出してしまった。

「うぅ……」

「ちょ、雪菜ちゃん泣かないで!」

なんとかなだめようとしたけど、泣き止むどころか更に悪化した。

「ど、どうしよう……」

そう考えていた時、僕はあることを思い出して雪菜の手を握った。