そして放課後――

「ぼーっ……」

私は授業が終わってからも、教科書とノートを広げたまま黒板をじっと見ていた。

『あいつ大丈夫か?』

『今頃、あの子の頭の中は恋のキューピットでいっぱいね』

そんな話をシアンとソレイユがしているんだけど、二人の会話は今の私の頭の中には入って来なかった。

「それじゃあ、僕は行くね」

愛斗の言葉に私は我に返った。

「あれ?今日部活ないんじゃなかったっけ?」

「あー……うん。そうなんだけど、ちょっと寄るところがあるから」

「そっか」

愛斗は、そのまま足早に教室から出て行った。

その後をソレイユが追いかけようとした時、シアンがソレイユの和服の袖を引っ張った。

『シアン?』

『あのさぁソレイユ、その……』

ソレイユは、頬を赤く染めてシアンの言葉を待っていた。

シアンもまた、少しだけ頬が赤くなっていた。

あれ?もしかして二人って……。

『ま、またね!』

『あ、あぁ。また明日』

シアンは、少し名残惜しそうに袖から手を離す。

そしてソレイユはシアンの方を振り返ってから、愛斗の後を追いかけた。

「ねぇシアン、もしかしてソレイユのこと……」

『何のことかな?』

シアンは何事もないようにそう言い放つ。

「……わ、私たちも帰ろっか」

『そうだね』

私はそれしか言うことが出来ず、シアンはニコリと笑っていた。