【雪菜】

あれから数日――

私は、考え事をしながら通学路を一人歩いていた。

隣には、シアンが飛んでいる。

あれから、特に変わったことは起こっていない。

七つの大罪やアクたちの襲撃も受けていなく、ただいつもの日常を送っていた。

あの後私は、オルドに色々と聞かれたり体の検査されたけど、何も言われなかった。

「私の体に何か起こってるの?」

そう考えながら道の角を曲がった時だった。

『雪菜、危ないわよ』

「へ?」

シアンの言葉で我に返った時、私は目の前の人とぶつかってしまった。

「うわぁ!」

「……おい、ちゃんと前は見て歩け」

「ごごご、ごめんなさい!」

私は慌てて頭を下げた。

「はぁ、今度から気をつけろよ」

「す、すみません」

反省しつつ顔を上げると、私の瞳に彼の顔が映る。

「……」

こんな私でも思わず彼に見とれてしまった。

整った顔立ち、左目の下にはホクロがあって、青い眼鏡をかけている男の子だ。

うちのお父さんもかっこいいけど、これはまたイケメンな男の子だ。

そんな私の視線に気がついた男の子は顔をしかめた。

「俺の顔になんかついてるのか?」

「い、いえそんなことないです!」

「人の顔をじろじろ見るなんて、恥ずかしくないのか?」

「すみません……」

私、何回この人に謝ってるんだろ。

私はガックリと肩を落とす。

「それじゃあ、俺は失礼する」

男の子は私の隣を通り過ぎて行く。

男の子の姿が見えなくなったのを確認した私は、深く息を吐いた。

「はぁ……、心臓に悪かった」

『前を見てなかった雪菜が悪いわよ』

「だってぇ……」

シアンは、さっきの男の子が歩いていった方向をじっと見つめた。

『あの子……』

「どうしたの?シアン」

『……なんでもないよ』

私は、学校に向かって再び歩き出した。