【奇跡】

「なるほど……」

俺は、さっき戦闘が行われた場所に足を運んでいた。

そして、リュックからメモ帳を取り出し、そこに書かれたことを確認しながらページを一枚めくる。

『何か分かった?』

「ここで、シアンとアクが闘ったみたいだ」

『ここで?』

戦闘が行われたようには見えないくらい、ちゃんと修復されている。

これはきっとオルドの仕業だな。

子供たちの記憶も、オルドが操作してちゃんと家に帰しただろうし。

俺は、ズボンのポケットから携帯を取り出しモニターを映し出す。

そして、戦闘が行われた場所をかざす。

「まだ残ってるか」

携帯をポケットにしまい今度は小瓶を取り出す。

すると、その小瓶の中に真っ黒な液体が貯まる。

『奇跡、これって……』

「どうやら、もう第2ラウンドに入ってるみたいだな」

小瓶をリュックにしまい、俺はもう一度メモ帳に目を通す。

「奴らは、小瓶の中に入ってる物を集めているんだったな」

『それって確か、“あいつ”を作ってるってことだよね?』

「俺たちの未来通りに行くとするなら、それは避けては通れない道だろう」

『でも、それを止めなくちゃ!また、未来と同じ道を辿ることになっちゃう!』

「それは、俺の仕事じゃない」

『奇跡!』

俺は、もう一枚メモ帳をめくり、そのページに書かれた内容に目を通す。

「シンク、この後何が起こるか分かるか?」

『そんなの分からないよ』

「次は、こうなる」

俺は目を細めてシンクに言う。

「グリードがあいつらと闘う」

『えっ!』

きっと、未来が大きく変わるとするならここからだ。

なぜなら、俺がこの時代に来たからだ。

俺は、メモ帳をリュックにしまい歩き出す。

「もっと情報が必要だな」

アクは、この小瓶の中にある負の感情の集まりを使って、どうあいつを作り出しのか。

どうして、俺はこの時代ではなく、もう少し後の過去に一度飛ぶことになったのか。

なぜ、アクがこんなことをするようになったのか。

調べることは山ほどある。

「そろそろ、あいつも動くだろうしな……」

ここはまだ、あいつについて探りを入れるのはやめておこう。

下手に手を出して、消されるもの嫌だし……。

『奇跡?』

「何でもない」

俺は、夜空に浮かぶ星々を見上げた。