【ルル】

「はぁ……」

私は、外の景色を見ながら重々しく溜め息を吐く。

外なんか見たって何も見えない。

建物や木々や花々はこの世界には存在しない。

青い空も水や風も全てない。

見えるのは地平線だけ。

ここに閉じ込められて、どれくらいが経つのか、それすら分からない。

『望美……奈津……ハヤテ……』

私は窓に手を当てる。

ひんやりとした物が手の平に広がる。

ラースのお陰でハヤテと会うことはできる。

でも、それもいつまでかは分からない。

アクは、私のことを何かの実験に使おうとしているんだろう。

ここから逃げられない以上、その実験に使われるのは確実だ。

『……』

そろそろ覚悟を決めるべきなのか……。

私が、一言『はい』と言えばみんなは助かるのだろうか?

私がグリードの妻になれば……。

『何を考えている』

後ろの方で声がして私は振り返る。

そこには部屋の扉に寄りかかるグリードが立っていた。

『よく最近来るわね』

『命令だからな』

『本当にそれだけなの?』

私は、グリードにそう聞き返した。

彼は、本当にただの命令だけで私のところへ来ているの?

グリードは私の傍まで歩いてくると聞き返してきた。

『それは、どういう意味だ?』

『本当にあなたは、命令だから私の様子を見に来てるのかってことよ』

グリードは私の言葉に目を見開く。

『グリード、あなたは強欲の妖精でしょ?命令の為だけに動くなんて、私には分からない』

それとも何かアクに弱味でも握られているの?

『知ったような口を叩くようになったな』

『私はただ!』

グリードは、私の手首を掴むと自分の元へと引き寄せた。

『前に言っただろ?俺は、お前が欲しいと』

『……』

私はグリードから目を逸らした。

『目を逸らすな。俺の目を見ろ』

グリードに言われて私はグリードの瞳を見つめる。

綺麗な瞳……。