【アク】

『お帰りグラトニー』

『よぉアク』

グラトニーは、傷ついた斧を手荒く床に投げ捨てた。

傷の具合からして接戦だったようだ。

『機嫌が悪そうだな』

『仕留め損ねたからな。それに、いい所で時間が切れた』

『仕方ないさ、俺の扉はいつまでも使えるなんてことないんだから』

グラトニーが通ってきた世界をつなぐ扉が、砂のように消えてなくなる。

『他の奴らは帰ってきたのか?』

『まだプライドだけ帰ってきていないよ。それ以外は、みんな帰ってきた』

『へぇ、エンヴィーの奴闘えたのか?』

グラトニーは何か思いついたのか、斧を拾い上げると王座の間から出て行く。

『またか』

グラトニーは、エンヴィーやラストを虐めるのを楽しんでいる。

別にそんなこと俺には関係ないが、ラースが黙ってはいないだろう。

『ま、それはそれでいいけど……』

俺は、グラトニーが出ていった方向を睨みつけた。

『グリード、居るか?』

『ここにいる』

グリードは、俺の目の前に姿を現す。

さすがいつもながら早いことだ。

『ルルの様子はどうかな?』

『とくに変わったことは……』

『ないならそれでいい。俺の目的は一つ果たされたんだから』

俺は、玉座から立ち上がりグリードの目の前まで歩いていく。

『準備は整いつつあるんだ。焦らず行こうじゃないか』

グリードの前で足を止めしゃがみこみ耳元で囁く。

『次は、お前に行ってもらうぞグリード』

『分かってる』

グリードは立ち上がり深々と頭を下げる。

『強欲の妖精グリード、アク様のご期待に添えることができるよう、頑張らせていただきます』

『期待してるよ』

マントをひるがえし俺は王座の間から出て行く。