【愛斗】

「あ、お帰り奏佑」

「ただいま愛斗」

オルドの手伝いで本を運んでいたら、オレンジ色の扉が開き、中から奏佑とオランジュが出てきた。

どうやら無事リンクが出来たみたいだ。

『他の奴らは、まだ帰ってきていないのか?』

「うん、奏佑たちが一番だよ」

「嬉しいなあ、それで今こっちはどのくらい時間が経ったんだい?」

「そうだな……」

そういえば、僕たちここに来てどれくらいの時間が経ったんだろ?

『ここは、外の世界と違って時はゆっくり流れている。だから、お前たちが扉を通ったのは、今から三時間前のことだ』

「へぇ、じゃあ外の世界では何時間経ってるだろ??」

『そうだな……』

ソレイユは少し考え始める。

『十二時間だ』

「えっ?」

奥の部屋からオルドが出て来て、さらりとそう告げた。

え、ちょっと待ってよ……?

僕たちがここに来たのは夕日が見えた時間帯で、その後一時間は過ぎたとする。

そして奏佑たちがこっちに来て、扉を通ってそこから十二時間って……。

「じゃ、じゃぁ今あっちは夜中じゃん?!」

「いや、夜中どころかもう朝方だぞ」

僕は、慌ててオルドに駆け寄る。

「い、今すぐ僕たちを外の世界に帰してください!」

『なぜだ』

『親が心配するだろ』

『安心しろ、記憶操作くらいしてやる』

き、記憶操作ってそんな怖いことを……。

てか、そんなこと普通に出来るんだ。

「記憶操作できるならいっか」

「いやいや、良くないから!」

『そんなことより、ちゃんとリンクできるようにして帰って来たんだよな?』

「もちろんさ」

奏佑は、左手の薬指にはまっている指輪をオルドに見せる。

それを見たオルドは、頷くと他の扉に目を向けた。

『なにか、あっちで起こらなかったか?』

『七つの大罪の一人に襲われた』

「ええ?!」

なんで七つの大罪が扉の向こうに?

『やっぱりか』

「何か心当りでもあるんですか?」

『一応な、アクが扉を使うのを感じたから、何か仕掛けてくると思っていたんだ』

「アクが扉を使うのを……?」

「たしか、あいつら帰るとき黒い扉を使っていたぞ」

僕は、そこでアクとスロウスと闘った時のことを思い出した。

言われてみればアクは黒い扉で移動していた。

『あいつの扉を使う力は、俺のを見て真似たんだ。そのせいもあるから、少しだがアクが扉を使ったことが分かる』

『さすがだな』

『お前もだろオランジュ。よく二人で七つの大罪の内の一人を追い返せたな』

「追い返せたって言うのかな?」

奏佑は苦笑しながら言った。