【一葵】

「ここって……」

扉を開けて出たところ見覚えのある場所だった。

たしか、家の近所の公園だったはずだけど。

なんでこんな所に出たんだ?

公園の中は草木が生い茂っていて、公園の中を吹き抜ける風が気持ちよかった。

「それでぇクロア。さっそく草木を見つけたけど、場所はここでもいいのか?」

『問題ないよ。俺は若葉の妖精だから、草木がある場所ならどこでもいい』

「ふぅん、そんなもんか」

俺は公園の中を見渡した。

いつもならガキたちの声や、世間話をしているおばさんたちがいるはずなのに、今日に限っては誰もいない。

「んでクロア。場所と時間はクリアした。一番難関な条件はどうするんだ?」

『それは一葵と俺次第』

「さっきもそんなこと言ってたよな、俺とクロア次第ってどういうことだよ?」

『まずリンクの源は気持ちなんだ』

「気持ちだぁ?」

どうやら俺の苦手分野らしい。

『例えば誰かを守りたいとか』

「そんなの考えたことねぇよ」

俺は芝生の上に寝そべる。

「第一、誰かを守りたいとかそんな立場に立ったことがねぇ」

そういう立場にいたのは奏佑とか愛斗くらいだ。

俺はただ遠くで見ていただけだ。

『よく考えてみろよ』

「めんどくせ……」