放課後になり、あたしはすぐに教室を出た。


聖也の過去が気になっていた。


だけど本人に聞くなんてまずできないから、聖也と同じ中学出身の子に話を聞こうと思ったのだ。


聖也と同じ中学といえば礼もそうだけれど、礼にそんな質問をすればすぐに聖也の耳に入ることになるだろう。


隣のクラスが終わるのを待って、教室の中を覗くと1人の友人があたしに気が付いて手を振って来た。


「野乃花、放課後ここに来るなんて珍しいね」


駆け寄って来た背の小さな女の子はアスカと言って、1年生の頃同じクラスで仲良くなった子だ。


「アスカ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」


「聞きたいこと?」


「うん。ここじゃちょっと話にくくて……」


「そうなんだ? じゃぁ、移動しようか」


アスカはそう言うと鞄を持って来た。


2人で並んで歩いていると、聖也の後ろ姿が見えた。


なにか考えながら歩いているのか、ときどき人とぶつかりそうになっている。


ひと気のない廊下までやってきて、あたしはようやく足を止めた。