さっきから結菜は聖也にやけに攻撃的だ。


普段からそんなに仲良くしていない聖也に聞き耳を立てられていたんだから、仕方のないことだけれど。


「まぁまぁ、いいじゃん結菜。あたしたちは本当の事しか言ってないんだし」


礼の悪口ではあったけれど、聖也だって礼を見ていればその素行の悪さを知っている。


こんなに経過する必要はない。


「あぁ、間違ってないよ。ただあの噂話に付け加えるストーリーがあるとすれば……」


聖也は視線をそらし、遠くを見るようにグラウンドを見つめた。


「被害者の女の子は、その後自殺した」


聖也の言葉に時間が止まった。


今まで言こえてきていた昼休みの喧騒が静かになり、風の音も鳥の鳴き声も入ってこなくなった。


そして、あたし自身の息遣いさえ消え去っていた。


「冗談でしょう?」


結菜のその言葉で、ようやく止まった時間は動き始めた。


スッと息を吸い込んで、大きく吐き出す。


聖也はすでに視線をこちらへと戻していた。


「本当の事だよ」


聖也は結菜へ向けて一言そう返事をすると、本を片手に屋上から立ち去ってしまったのだった。