それからあたしと聖也は近くの公園に移動してきていた。


なんだかすぐに帰る気にはなれなくて、どちらともなく公園のベンチに座った。


「聡さんの遺書、あれは反則だよね」


あたしが言うと、聖也は笑って「そうだな。思わず涙なんか出て来るよな」と、返事をした。


あたしは青々と茂った木々に視線をやった。


こぼれ陽がキラキラと宝石のように輝いて地面に降り注いでいる。


「あたしたちがやってることって、間違ってないのかな?」


公園の遊具で遊んでいる子供たちの声を聞きながら、あたしはそう言った。


「……正直、わからない」


聖也は左右に首を振った。


その答えは意外だった。


聖也のことだから『間違いなわけがないだろ』とか、言われると思っていた。


「死ぬ理由をほんの少し動かせただけの、ただの自己満足かもしれない」


自己満足。


死ぬとわかっていてなにも行動しないより、なにかしていた方がいい。


それ自体が、聖也の自己満足の世界。