結局、あたしたちは何も変える事なんてできないんだ。


人が減った丸山家の玄関先で棒立ちになり、あたしはそう思った。


人の生きる時間をほんの少し伸ばしたって、なんの役にも立たない。


「丸1日以上、生きている時間を伸ばす事ができたな」


聖也の言葉にあたしは自分の耳を疑った。


聖也はこの結果で満足しているのだろうか?


死ぬ時間を遅くしたって、ほとんど変化なんて起こらない。


聡さんは自分から命を絶つことをやめなかった。


「どうしてそんな平気な顔をしていられるの?」


聖也の冷静さが癪に障ってあたしはそう言った。


死ぬとわかっている人を助けたい。


なにもしないよりなにかした方がいい。


そう言ったのは聖也だ。


「今までで一番長く時間を引き延ばす事ができた。これは大きな成果だよ」


聖也はそう言い、目を輝かせる。


あたしは左右に首を振り、「あたしにはわからない」と、小さな声で言った。


人が1人死んでいるのに、それを成果だと呼べる聖也にあたしはうつむいた。