「自殺って……嘘でしょ?」


体中から血の気がひいていくのがわかった。


昨日の聡さんの顔を思い出す。


聡さんは時々涙ぐみながらも、昔話を喜んで話してくれた。


「ちょっと、道を開けてください」


呆然と立ち尽くしていると、聖也がハッと我に返ってそう言った。


ここで立っていても真実はなにもわからない。


とにかく家の人に話が聞きたい。


あたしと聖也は人ごみをかき分けて玄関の前まで移動した。


しかし、入口は警察官がいて入れない。


「すみません、おじさんおばさん!」


大きな声を出して呼ぶと、おばさんが家の奥から顔を出した。


その目は真っ赤に充血していて、今もまだ涙があふれ出している。


「何があったんですか!?」


今度はあたしが叫ぶようにそう聞いた。


しかし、おばさんは何も返事をしない、ただ涙を流し左右に首を振るだけだった。


警察官や野次馬がこんなにいるということは、事件が起こってからそれほど時間も経過していないのだろう。