「もしかして、お兄さん自殺なんかしないよね?」


バスの中から確認する限りでは、お兄さんに不健康そうな状態は見られない。


けれど番号札は二桁まで落ちている。


この調子なら明日、明後日には死期が迫っているという事になる。


「相当落ち込んでる。自殺の可能性はあると思う」


聖也はそう言い、立ち上がった。


「どうするつもり?」


「丸1日、丸山先生と一緒にいてみる」


「えぇ? そんなことできないよ!」


あたしたちと先生のお兄さんは面識がない。


あたしたちが馴れ馴れしく近づけば、相手はきっと警戒するだろう。


「自殺願望が保たれるのは30分だけだって知ってるか?」


「え……?」


「人が本気で自殺を考えられる時間は約30分。30分経過すれば少しは気持ちが落ち着くってことだ」


「そうなんだ……」


「何度も自殺願望が出てきても、最初の30分を乗り切れば助かるかもしれない」


聖也は真っ直ぐにあたしを見て言葉を続ける。


「1日一緒にいれば、お兄さんの自殺願望が消えるかもしれないってことだよね?」


「あぁ」


聖也は大きく頷いた。