丸山先生は幼いころに両親を亡くし、兄弟2人が親戚の家で育てられたと言っていた。


その親戚には子供がおらず可愛がられていたのだが、物心ついてから両親を亡くした2人の傷は深かった。


いくら親戚によくしてもらっても、傷ついた心が埋まることはなかった。


親戚の家に預けられてすぐの時は、昼間は活発でいい子を演じ、夜になると両親を思い出して泣くという生活を繰り返していたようだ。


兄弟は2人で寄り添いながら親戚の愛情を受け、徐々に傷も癒えてそれぞれの道を歩きだしたのだ。


今まで世話になった親戚に恥をかかせないよう、お礼ができるように立派な職業に就くという目標を持っていた。


だから丸山先生は教師に、お兄さんは市役所に勤める事になった。


これから先の人生は自分の好きな事をしながら、親戚のおじさんおばさんに恩返しをしていくために使う。


丸山先生はロングホームルームの時間を使ってあたしたちにそんな話を聞かせてくれていた。


丸山先生にとってお兄さんは、寄り添い合った唯一の存在なのだ。


そしてそれは丸山先生のお兄さんにとってもそうに違いなかった。