『あぁ~はいはい。和が言ってた通り何も気が付いてないんだね』


結菜の言葉にあたしは和の言葉を思い出していた。


好きな相手は鈍感だと言っていた。


「ちょっと待って? 和の好きな相手って誰?」


そう聞くと、また結菜の笑い声が聞こえて来た。


今朝はあれだけ元気がなかったのに、今は大違いだ。


『そんなの、野乃花にきまってんじゃん』


笑い声と共にそう言われて、あたしの思考回路は停止した。


結菜の言葉を頭の中でゆっくりと反復する。


和の好きな人は、あたし……?


数十秒かけてようやくそう理解したあたしは、次の瞬間顔がカッと熱くなった。


「そ、そんなワケないじゃん」


慌ててそう言うけれど、自分の声が震えていてうまく否定できていない。


『わざわざ和があんなにわかりやすい事を言いに来たのに、野乃花ってば本気でそんな事を言ってるの?』


「だ、だって……」


あたしはしどろもどりになって視線を空中へと泳がせた。


和に直接告白されたワケでもないし、そういう素振りがあったかどうかもわからない。