聖也は自分の能力にひどく苦しんでいる。


今は違ったとしても、過去そうやって苦しみどうにか笑顔を取り戻したんだろうと言う事が、安易に想像できた。


「嫌」


あたしは冷たく言い放つと聖也から視線を逸らした。


「なんでだよ」


「人間が人間の命を左右させるなんておかしい」


「それは……そうかもしれないけれど。野乃花は死ぬ人間を知っていて無視できるのか!?」


聖也の言葉にあたしは思わず立ち止まった。


そして無意識の内に聖也を睨み付けていた。


死ぬ人間を無視できるわけがない。


次に死ぬのはこの人だと知っていて自然体を装う事がどれほど辛い事か。


「あたしだって変えられるなら変えたいと思って来た。だけど、無理なものは無理なんだよ」


あたしはそう言い、聖也を追い越して1人で歩き始めたのだった。