丸山先生は死んだと言うのに、その表情は希望に満ちている。


「俺が見た夢では丸山先生は即死だった。それが2時間も遅れてるんだ!」


興奮したようにそう言う聖也。


一瞬聖也の言葉の意味がわからなかったけれど、何かが狂ったのだということは理解できた。


「それってつまり……」


「先生の死ぬ時間が遅れた。きっと、ここにいるはずのなかった俺たちがここにいるからだと思うんだ」


「そうなのかな……? 予知夢って100%すべてが合致するものなの? もし少しのズレがあるとすれば、2時間のズレなんて大したことじゃないでしょう?」


そう言うと、聖也はムスッとした表情になってあたしを睨みつけて来た。


「おととしの夏、隣の家のおじいさんが亡くなったんだ。その時も予知夢を見た俺は、朝早くにおじいさんと会ったんだ。


そしたら、死ぬ時間が少しだけ遅くなった。今回と同じなんだよ!」


聖也の言いたいことはわかる。


でも、それは決定的なものではない。


あまりにもアバウトで期待していいものかどうかも怪しい。


そう思って無言のままでいると、聖也はまたムッとした表情に戻ってしまった。


「こうやって少しずつ時間をズラす事で、死ぬ人を助ける事ができるかもしれないんだ」