番号札が見えてよかったと思ったことなんて一度もない。


自分の人生の足かせにこそなっているけれど、可能性なんて微塵にも感じられなかった。


「死ぬのがわかっていれば、助けることもできるかもしれない」


その言葉にあたしは大きく目をみひらいた。


死ぬ人間を助ける事。


それは随分昔にあたしが諦めたことだった。


あたしは人間だ。


人の生死を操る事なんてできない。


番号を変える事もできない。


「助けられた?」


そう聞くと、聖也は左右に首をふった。


「残念ながら、惨敗更新中」


そう聞いて、あたしは半分ホッとしていた。


万が一1人でも救える命があったなら、あたしはそれを見逃していたことになる。


「変える事なんて、きっとできないよ」


あたしはそう言った。


聖也もそれは痛いほどによく理解していることだった。


あたしたちは人が死ぬ事が見えているだけだ。


そこに可能性なんて、一ミリも存在していない。