「いや、俺にはそんなものは見えないよ」


聖也の言葉にあたしは体中の力が抜けていくのがわかった。


聖也には番号札が見えていない……?


あたしと同じかもしれないという期待が、一瞬のうちに砕けて消えていく。


心の中に大きな空洞ができたような感じ。


「そっ……か……」


あたしは聖也と同じようにうつむいた。


リノリウムの床が嫌味なくらいに輝いている。


不意に、視界が歪んで見えた。


次に鼻の奥にツンッと刺激が走り、目の奥が熱くなり、自分の涙が見えた。


あぁ、あたし泣いてるんだ。


自分と同じような人に出会えた。


その希望があっという間になくなってしまって、悲しいんだ。


そう理解するともう止められなかった。


涙はとめどなく溢れては頬を流れて落ちていく。


「うっ……」


思わず嗚咽を漏らした。


「え、ちょっと、大丈夫?」


聖也が慌ててハンカチを取り出す。


あたしはそれを拒否し、ポケットから自分のハンカチを取り出して目に当てた。


それでも涙は止まらない。