ここ数年間ずっと黙っていたこと。


言わない方がいいんだと思い、自分の中でけじめをつけてきたこと。


「あたし、番号札が見えるの」


「……番号札?」


聖也はそう言い、待合室にいる患者たちに視線をやった。


その手には紙の番号札が握られている。


「番号札の数字はどんどん減って行って、それがゼロになるとその人は死ぬの」


「なにを言って……」


「聖也にも、見えてるんでしょ?」


あたしは聖也の言葉を遮ってそう聞いた。


聖也はマジマジとあたしを見ている。


「……丸山先生の番号は?」


「昨日の時点は二桁まで減ってた。丸山先生は今日死ぬ」


「……そっか」


聖也はそう呟き、視線を落とした。


「ねぇ、あたしが聞きたいのはあんたも番号が見えているのかってことなんだけど」


そう聞くと、聖也はゆっくりと左右に首を振った。