☆☆☆

~結菜side~


あたしは唖然として爆発したバスを見ていた。


正確には、脳裏で見ていた。


ここはバスを下りてすぐの歩道。


あれから大雨が降り始めたけれど、誰もその場から動こうとしなかった。


「あの2人、結局あたしたちを助けるために?」


そう言ったのは委員長だった。


「そうみたいだね」


誰かが答える。


「悪い事しちゃったかな」


また、誰かが答える。


「仕方がないよ、あの2人は被験者なんだから」


諦めたような声が聞こえてくる。


「野乃花……」


あたしは知らず知らずにそう呟いていた。


被験者の友人を演じていたあたしだけれど、少し悲しい気持ちがあるのかもしれない。


あたしの能力は遠くで起きている出来事を脳裏で見る事が出来る事。


さっき発言した委員長の能力は人の心が読める事。


先生の能力は他人の気持ちをほんの少し動かす事。


それだけじゃない。


亡くなった丸山先生も、礼も和も、みんななんらかの能力を持っていた。


それが普通。


ここはそういう世界なのだ。