「おい、お前らなにを……」


先生は混乱した表情であたしと聖也を交互に見つめる。


クラスメートたちも何かのサプライズだと思っているのか、緊張感のない顔だ。


もっと怯えてくれればあたしもやりやすいのだけれど、こればっかりは仕方がない。


毎日顔を突き合わせてきたクラスメートの豹変ぶりなんて、なかなか信じてもらえるものじゃない。


だけど、ここで本気だと言う事をアピールしてバスから降りてもらわないと、いけないんだ。


あたしは運転席の座席をナイフで大きく切り裂いた。


ザックリと開いたところから中綿が飛び出し、生徒たちが一瞬「あっ」と声を上げた。


「このナイフは本物よ。あたしも本気」


あたしはそう言い再び運転手にナイフを突きつけた。


「もう一度言う。このバスはジャックした。バスのドアを開けろ」


聖也がいい、運転手がそれに従う。


外の雲行きは怪しくなってきている。


今にも雨が降り出しそうだ。


「全員外へ出ろ。運転手、お前もだ!」


聖也が指示を出すと、クラスメートたちはとまどいながらバスの外へと向かう。


運転手が最後に下りて、車内にはあたしたちだけが残った。


聖也が運転席にうつり、馴れた手つきでドアを閉めた。


「運転するの?」


あたしは驚いて聖也に聞いた。


「あぁ。一度やってみたかったんだ」


聖也はそういい、まるで子供のようにほほ笑んだのだった。