できるなら、また目を背けたかった。


前と同じように見て見ぬふりをして、何も手を出さずに生きていたかった。


聖也は自分がどれだけ苦しい思いをしようと、目をよむけず、前を見て生きて来た。


それはきっと、目を背けて生きて来たあたしよりも、ずっと辛い経験だっただろう。


好きな人を失ったからこそ、自分の能力に否定的になったときだってあるはずだ。


「野乃花、大丈夫だから。きっと、うまくいく」


聖也はそう言い、あたしの手を握った。


うまくいく。


そんな根拠のない言葉に、あたしは頷くしかなかったのだった。