雷はすぐそばの木に落ちたようで、窓の外に赤い炎が立ち上るのを見た。


雷を受けた木々はその場に立っていることができなくなり、バスの前後を塞ぐようにして倒れ込んでくる。


「キャァァァ!!」


バスの中であちこちから悲鳴が聞こえて来る。


木はバスの上にも倒れ込み、また大きく揺れた。


「聖也!!」


そんな声が聞こえてきて、俺は我に返った。


「野乃花!?」


危ないとわかっていても席を立ち、野乃花を探す。


野乃花はたしか一番後ろの席にいたはずだ。


そう思い、通路へ出て後方へと向かう。


窓の外には木々は炎に包まれていて、バチバチと音を立てている。


これだけの豪雨だというのに、その炎は消える気配を見せない。


「野乃花!」


一番後ろまで移動すると、野乃花が座席の下でうずくまっているのが見えた。


「大丈夫、大丈夫だから!」


そう言いながら、野乃花の上に覆いかぶさるようにしてうずくまった。


車内に煙が充満し始める。


しかしバスのドアは開閉が壊れてしまったようで開かない。


「窓を壊して外へでろ!!!」


先生の怒鳴り声が聞こて来る。


生徒の誰かが窓を割る音が聞こえて来る。


「野乃花、外へ……」


そう言った瞬間、バスは爆発音とともにドンッと大きく跳ねあがり、俺たちの体は車内に強く打ちつけられた。


悲鳴と鳴き声。


窓が割れる音と、炎の熱。


それはまさに地獄絵図だった……。