視界が悪く、ワイパーを動かしても雨の方が勝っているような状態だ。


バスの運転手はスピードを落とし、ゆっくりと斜面を上がって行く。


天気は更に悪化しはじめ、稲光が見えた。


女子たちが悲鳴を上げて、その後雷がとどろく。


「光ってから音が鳴るまで時間があるから、大丈夫だ」


担任の先生が気を使ってそう言う。


それはどこかで聞いたことのある話だった。


雷がおちたのはどこか遠くだ。


だけど、俺たちが乗るバスは山の頂上へと向かっている。


生徒たちの顔には不安の色が見え始めた。


会話は途切れ、みんなが外の雨を見つめている。


薄暗くなった森の中は気味が悪く、今にも魔物が飛び出してきそうだ。


その時、再び稲光が見えた。


直後に大きな雷の音が鳴り響く。


でも、音に驚いている暇なんてなかった。


音が鳴り響いた瞬間バスが大きく揺れたのだ。


必死に椅子にしがみつくクラスメートたち。


俺も窓にかけられているカーテンを強く握りしめていた。