夢を見ていた。


俺はバスの中にいて、クラスメートたちの笑い声に包まれている。


湿っぽい空気はどこにも流れていなくて、みんなが笑顔だ。


担任の先生が生徒からあめ玉を貰って頬張っている。


これは……明日のバス旅行の様子か。


俺は夢を見ながらそう考えた。


バスは左右へ大きく揺れながら順調に目的地へ進んでいく。


博物館は少し高い山の上にあるが、その道はきちんと整備されていた。


右へ左へと曲がりくねった道を進むうち、バスの外は暗くなり始めていた。


「雨が降りそうだね」


結菜が呟くのが聞こえて来た。


空には分厚い雲が覆いかかっている。


「せっかくのバス旅行なのにぃ」


「ほんとほんと、課題も必死で終わらせたのにねぇ」


あちこちからそんな声が聞こえて来る。


曇りはじめてから雨が降り始めるまでに、時間はかからなかった。


突然大粒の雨が降り始めて、バスの中は雨音で会話ができないくらいになっていた。