聖也は聖也なりに自分の能力を理解しようと必死なのだ。


「参考になるもの、あった?」


あたしがそう聞くと、聖也は左右に首を振った。


「いや、ない」


それはわかり切っていた返事で、あたしは思わず笑ってしまった。


空想や想像の世界だけで書かれている作品を読んでも、実際に参考になるものなどどこにもないのだ。


「大抵の作品が、未来は変えられるって内容なんだ。だけど、現実は違う。未来は簡単には変わらない」


聖也が言う。


あたしはジッと聖也を見つめてその言葉を聞いていた。


「『変わらない』とは、言いきらないんだね?」


そう聞くと、聖也は照れたようにほほ笑んだ。


「バカみたいだと思ってるだろ」


「思ってないよ。その強い意思はすごいなって思う」


あたしは素直にそう言った。


あたしは自分の能力から逃げ出した身だ。


聖也がずっと真っ直ぐに能力と向き合い、未来は変えられると信じているのを見ていると、とても素敵に見えた。