聖也との約束場所は近くのコンビニだった。


大きな鞄を下げて移動してきたあたしは、雑誌コーナーの前で立ちどまり、ホッと息を吐き出した。


男の子のひとり暮らしの家に行くなんて、自分の行動が信じられなかった。


「ちょっと荷物多すぎたかなぁ」


重たいバッグを床に置いてそう呟く。


タオルやドライヤーまで持って来てしまった。


聖也の部屋にあるかどうかわからなかったし、聖也が使っているタオルを使うのはやっぱり恥ずかしかったからだ。


「一泊するだけなのに、どれだけ持ってきてんの」


呆れた声が聞こえてきて振り返ると、聖也が店内に入って来たところだった。


「えへへ。何を持っていけばいいかわからなかったから、自分で使うものは全部持ってきた」


そう言うと、「俺だってひとり暮らしなんだから、全部そろってるつーの」と、しかめっ面をして言われた。


「あとは勉強道具も持ってきたよ」


「あぁ、3日分とは思えないくらいの量を出されたもんな」


聖也はそう言い、苦笑いを浮かべた。


先生としても、この学級閉鎖の期間中になにか問題が起こらないか不安なのだろう。


できるだけ課題を多く出して、外出する時間を少なくしようと考えたようだ。


「さて、冷蔵庫の中に何もないんだ。何か買って帰ろう」


聖也にそう言われ、あたしは頷いたのだった。