「もしもし?」


『もしもし野乃花?』


何度もあたしを助けてくれた人の声が耳元に届いて、一瞬ドキッとしてしまう。


和にひどい失恋をしたばかりだというのに、自分の気の多さに自分自身で呆れてしまう。


「どうしたの?」


『今日、うちに泊まりにこないか?』


聖也の言葉にあたしの思考回路は真っ白になった。


今、なんて言われたの?


『ほら、俺たちの能力についてもう少し話とかしないか?』


聖也が慌ててそう付け加えた。


「う、うん。それはいいけれど……家族の人とか、大丈夫なの?」


男の子の家に泊まりに行った事なんて今まで一度もないし、聖也の両親に迷惑がかかるかもしれない。


『大丈夫。俺ひとり暮らしなんだ』


その言葉にあたしは驚いた。


そう言えば聖也の家族構成なんかを聞いたことは今まで一度もない。


それでもひとり暮らしをしているとは思わなかった。


「……わかった、行く」


両親には結菜の家に泊まると言って出ればいい。


あたしはそう思い、返事をしたのだった。