2つの机に置かれた花瓶の花を直視するには、まだ時間がかかりそうだ。


休み前日の授業をすべて終えて、あたしはホッと息を吐き出した。


しばらく学校から離れる事ができるのはあたしにとっても心が軽くなることだった。


礼や和の事を思い出すと心はえぐられる。


その時間が少しでも減るのは嬉しかった。


「野乃花、疲れてるみたいだけど大丈夫?」


結菜にそう聞かれて、あたしは曖昧な笑顔を浮かべた。


結菜も人づてに聞いているはずだ。


金髪の男が死んだことを。


しかし結菜は気丈にふるまい、いつもと変わらない様子を見せている。


「結菜は強いね……」


あたしは思わずそう呟いていた。


「そんなことないよ。本当はすごく悲しいし、動揺もしてる。でも、あたしにはなにもできないから」


結菜はそう言った。


あたしには何もできない。


その言葉が、あたしの胸に重たくのしかかってきたのだった。