そう思うと、礼に声をかける事もできなかった。


ネオンの中自転車を押してライブ会場を探す。


狭い路地の建物と建物の間に、地下へ通じる階段を見つけた。


閉めっぽくて暗いその場所には沢山の若者たちが出入りしていて、階段の横には【ユーズ】と書かれた看板が出ている。


「ここかな……?」


あたしは恐る恐る階段に足を延ばす。


その時だった、階段の下にある扉から真っ赤な服を着た派手なメークの女が出て来た。


女は3人の男たちに絡まれているようで「やめて」とか、「ほっといて」と言った言葉が聞こえて来る。


女が階段を上りはじめて、途中で目があった。


「あっ……」


あたしとその女は同時に口を開いていた。


真っ赤な服の女は礼だったのだ。


礼も、どうしてあたしがここにいるのかと驚いた顔をしている。


あたしは礼に付いてくる若い男に視線をやった。


金髪だったり、ソフトモヒカンだったり、普通の仕事をしているようには見えない。


「なになに? 友達?」


「へぇ、こっちは超まじめそうじゃん!」


「でも礼ちゃんより可愛いんじゃねぇ?」


男たちの興味が注がれてあたしは後ずさった。


その瞬間だった。