でも……。


「あたしにはできない」


あたしはそう言っていた。


オレンジ色に染まった公園に、あたしの声が消えていく。


「え……?」


聖也が目を丸くしてあたしを見た。


「あたしは聖也の能力に気が付く前のあたしに戻ろうと思うんだ」


それは聖也の過去を知ってからすぐに考えた事だった。


聖也は自分の彼女を助けられなかったことで、自分の能力と向き合っている。


今度こそは助けるぞと強い意志を持っている。


だけど、あたしにはそんな意思はなかった。


聖也と肩を並べて人の命を助けるほど、強くもなかった。


あたしは聖也ほどの過去を背負ってはいない。


自分の能力の意味にすら、気が付いていない。


「ごめんね、聖也」


あたしはそう言い公園を後にしたのだった。