「それってすごく矛盾してるよね」


あたしが言うと、聖也は笑った。


「あぁ。だけどさ、野乃花が言ったように俺たちは神様じゃない。


人間の生死なんて操る事ができない。そう考えると、『助けたい』って気持ち自体が邪魔をしているんじゃないかなって、思って」


なるほど、そういう事か。


あたしは聖也が言おうとしていることの意味を理解した。


『助けたい』。


という、おこがましい気持ちを捨てれば何か変わるかもしれない。


そういう事だ。


「『助けたい』と思わずに人を助ける事なんて、本当にできるの?」


「う~ん……難しいとは思う。だけど、何でも発想の転換ってよく言うだろ? 『助けたい』っていう感情を別の感情に置き換えれいいと思うんだ」


聖也はどこまでも前向きだ。


なんの根拠もない事でも、とにかく思い立ったら行動してみる。


自分の能力に関しては、そういう所がある。


そんな聖也の考え方はすごいと思う。