花びらを手ですくって壁にかけると、それはきれいな模様となって壁に残った。それからは夢中になってお湯にのせて花びらを飛ばした。青、黄、白、むらさき、緑、つまらない風呂場は幻想的なせかいにかわる。

 天井に模様がないのを不満に思って花びらをすくって立ちあがった。すると、立ち上がった私の体に花びらがついて模様をつくった。はっとなって鏡を見ると、そこには今まで見たことがないほどきれいな私がいた。

 私は自分に見とれる。きれいだなと思い、それから、唐突に怖さが込み上げてきた。花びらがもう死んでしまっていることに、ようやく気づいた。今まできれいに見えていた花びらが急に怖くなった。

 枯れるまえによりきれいな花を見ておきたかった。でも、この花びら達が花に戻ることはない。枯れているのと同じで、もう死んでしまっている。

「いや!」

 私は小さく叫んで、それからシャワーのお湯を思いきり出して身体についた花びらを流し落とした。壁の模様も流し落として、湯船から花びらをすくって追い出す。

 身体が芯まで冷えきってしまっているような気がした。花を殺したのは私だ。