「せっかくそんな立派なものを貰ったんだから、きっとけよ」

「もちろんよ」

「花はすぐ枯れちゃうからな。今のうちに楽しんどかないと」

 その言葉はずしんと胸に落ちてきて、からみつくようにして私から離れなくなった。この花たちはすぐに枯れて美しさを失ってしまう。それは許されないことだ。

 おじさんがくれた最期の花の美しさを、いつまでもとどめておきたかった。どうせ枯れてしまうなら……。

 私が風呂場にかけこむと、ちょうど湯船いっぱいにお湯がたまったところだった。

 お湯を止め、着がえを持ってくるのも忘れて急いで服を脱ぐ。そして花束をバサバサとお湯の上でふった。花びらが舞って落ち、お湯の上にうかぶ。手でむしって残った花びらを落とすと、たくさんの花びらでお湯が見えないほどになった。

 花の絨毯の上にそっと足をのせるとしたら、指先はあっけなく絨毯をとおりぬけ、熱いお湯を感じた。私はそのまま花の中に全身をうずめた。身体が芯からほてってきて胸がドキドキと高鳴る。